1400年に朝鮮王朝の3代王となった太宗(テジョン)は、王の威厳を示すために、大きな仕事をしたがりました。その願望をかなえるために1405年に建設したのが、景福宮(キョンボックン)の離宮となった昌徳宮(チャンドックン)です。
景福宮に劣らない威厳と格式
昌徳宮は、ただの離宮ではありませんでした。景福宮が焼失したときには正宮として使われることが多かったのです。それだけに、景福宮に劣らないほど各施設は威厳と格式を備えていました。
たとえば、1412年に最初につくられて1608年に再建された敦化門(トンファムン)は、現在の韓国でもっとも歴史のある門です。
また、仁政殿(インジョンジョン)は華麗な伝統様式を受け継ぐ正殿で、室内には玉座も設置されています。
昌徳宮は、自然と調和するように各施設が配置されていることでもよく知られます。中でも、木々の緑に囲まれた秘苑(ピウォン)は、“朝鮮王朝時代の自然美の極致”と称されます。
実際、もとの地形がそのまま生かされており、秘苑に行くと、自然を大切にしていた朝鮮王朝時代の美意識がはっきりと伝わってくるのです。
また、昌徳宮は朝鮮王朝の最後を見届けています。
実は、朝鮮王朝最後の王であった27代王・純宗(スンジョン)が1910年に王位を失った後、最期まで暮らしたのが昌徳宮なのです。1997年には、ユネスコの世界文化遺産に指定されています。
文=康 熙奉(カン ヒボン)