韓国ドラマはテレビ局で放送されているが、実際には外部の制作会社が撮影を行なっているケースが多い。これは、韓流コンテンツの活性化のために、外注制作を増やすような政策が取られているからだ。そういう観点からドラマの制作現場を見てみよう。
テレビ局を退社したPDたち
大衆文化振興策として、外部の制作会社が撮ったドラマの比率を増やしているのが各テレビ局の現状である。その結果、大小の制作会社がたくさん誕生している。
ただし、外部の制作会社と言っても実態は、テレビ局に所属していたPD(プロデューサーを兼務した監督)が退社して、様々な人脈を生かして制作会社を作るケースがとても多くなっている。
たとえば、『冬のソナタ』の演出をしたユン・ソクホ監督は、もともとKBSの社員だったが、そのKBSを辞めて外部の制作会社で活動するようになり、さらにユンスカラーという制作会社まで作っている。そのユンスカラーが制作したドラマが『春のワルツ』であった。
また、不朽の名作と言われた『砂時計』で一世を風靡したキム・ジョンハク監督は、自らキム・ジョンハク・プロダクションという制作会社を立ち上げて、ペ・ヨンジュン主演の『太王四神記』を作っている。
前記のように、テレビ局に所属しているときに大ヒット作品を演出したPDが、自ら制作会社を立ち上げて活躍する例が多い。
とはいえ、その制作会社が安定した経営をできるかどうかは、ひとえに人気ドラマを量産できるかに掛かっている。
巨匠という名声を得た監督といえども、次々にヒット作を作れるとは限らない。視聴率が低迷するようなドラマを1本でも作ると、その後の経営に大きな影を落としてしまう。実際、卓越した演出能力を持った監督でも、制作会社の経営となると、まったく別の能力を要求されるのだ。
そういう経営の難しさに対応できない場合もある。
よく知られているように、キム・ジョンハク・プロダクションを主導していたキム・ジョンハク監督は、俳優のギャラの未払い問題を起こしてしまい、自殺を余儀なくされてしまった。
この出来事は、各制作会社を震撼させるほど大きな衝撃を与えた。有名な監督とはいえ、制作会社を安定的に運営していくのは並大抵ではないのだ。
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