やっぱり面白い『トッケビ』6「神秘な世界」

超人気脚本家のキム・ウンスクが長く温めていた企画としてドラマ化された『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』。コン・ユが高麗時代から900年以上も生き続けている驚異の人物を演じているのだが、ドラマでは神秘の世界が存分に展開されていた。その世界は、今までに想像したことがないものだった。





奇想天外の世界

数年前の韓国ドラマでは、時代を超えてタイムスリップするという設定の作品が多かった。現代人が過去の一時期にタイムスリップしたり、過去の人物が現代に甦ったり……。一種のブームのように、タイムマシン的なドラマが作られた。
さすがに食傷気味になったと思っていたら、今度は度肝を抜かれるような異質のドラマが制作された。それが『トッケビ』だった。
この『トッケビ』の場合は、一連のタイプスリップものとは明らかに違っている。人間が時空を超えて他の時代に移っていくのではなく、900年以上も前の人間が現代までずっと生き続けているという設定だ。
「こんな奇想天外なことをよく思いつくね」
率直にそう思うのだが、そこは脚本家のキム・ウンスクの腕が冴えわたっている。
実際、『トッケビ』が描く世界は変わりすぎている。人間が1千年近くも生きているし、ドアを一歩出れば地球の反対側にも行くことができる。




『トッケビ』の中で当初一番驚いたのが、コン・ユが演じるキム・シンは、胸に剣が刺さったまま現代をさまよっているという設定だ。「トッケビの花嫁」と呼ばれる女性を見つけて、その剣を抜いてもらわなければ安らぎの世界に行けない。
そんなキム・シンが同居しているのが、死にゆく人々を天界に導く死神だ。イ・ドンウクが演じているが、その存在はどこかコミカルで、死神らしくない。そこがまたドラマの狙いでもあるのだろう。
キム・シンは、ようやく「トッケビの花嫁」としてウンタクと出会う。この女性もまた普通ではない。自分にだけ幽霊が見えていて、キム・シンの命運を握る絶対的な存在にもなっている。
以上のように、『トッケビ』というドラマは、「こんなにも空想の世界を楽しませてくれるのか」というほどに神秘的だ。
そんな世界に酔いながらふと考えてみる。「現代人の誰もが胸に剣が刺さったまま生きているのではないか」と……。
苦悩がない人はいない。




みんな、それぞれに悩みながら毎日を必死に生きている。
それは、言ってみれば、胸に剣が刺さったままと同じ状態ではないのか。ただ、その剣は見えていない。
そうであるならば、その剣を見える人を探すのもまた人生の目的である。
そして、どんな人であれ後ろから死神に追われていることには違いがない。「死」は避けられないものであり、人間は早かれ遅かれ「生の世界」から「死の世界に」に移っていかなければならない。
こうしてみると、『トッケビ』の究極のテーマは、「生」と「死」が交差する世界でどう生きるか、ということであろう。
劇中で「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する」ということが描かれる。一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる……。
人間が四度の人生を経験するならば、果たして自分は何度目の人生を歩んでいるのだろうか。
そう考えてみるのも、『トッケビ』というドラマがあったおかげだ。人間にとって最も根源的なことを描いている。




究極的に言えば、コン・ユが演じるキム・シンも、イ・ドンウクが扮する死神も、キム・ゴウンが演じるウンタクも、私たちを取り巻く「生」と「死」をくっきりとした形で見せてくれる人たちなのだ。
異なる世界に生きているように見えて、実は私たちのすぐそばにいる人たちの分身なのかもしれない。
そう考えると、神秘の世界が現実味を帯びてくる。
美しい映像と俳優たちの演技に魅せられながら、『トッケビ』が描く「空想と神秘の世界」を堪能できるのは、幸せなことだ。

構成=「韓流テスギ」編集部

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