演出は暗示が巧み
松坂桃李の演技にも引き込まれた。
ドラマ『パーフェクトワールド』を見ていて彼の演技力に感心していただけに、この『新聞記者』でも松坂桃李の力量が十分にわかった。
何よりも、これだけの人気俳優でありながら政権の闇に切り込もうとする作品に主演するという心意気がいい。彼のキャリアにとっても、『新聞記者』は非常に重要な作品になったことだろう。
藤井道人監督の演出は暗示が巧みだ。
特に、人も職場風景も無機質な内閣情報調査室そのものが、政権とメディアが癒着した末に生じる不気味さを映し出していた。
杉原の上司(田中哲司が扮していた)が「日本の民主主義は形だけでいいんだ」といったニュアンスのセリフを吐くが、今の日本はその「形」すらも危うくなっている。
その中で、社会に問題を提起できる映画を作った制作陣に敬意を表したい。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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