やっぱり面白い『トッケビ』8「度々の出演依頼」

キム・ウンスク作家といえば、『シークレット・ガーデン』や『太陽の末裔』という超人気作を執筆した人気脚本家だ。これほどの大物が、盛んにラブコールを送った俳優がコン・ユだった。しかし、彼は5年間にわたってその出演依頼を断り続けた。

写真=tvN『トッケビ』公式サイトより




断らざるを得ない事情

キム・ウンスク作家の出演以来を丁重に5年も断り続けたコン・ユ。いかに、彼が慎重な性格なのかがわかる。
それでも、キム・ウンスク作家は諦めなかった。再び、コン・ユに出演依頼をした。ただし、「また断られるのでは」と予想せざるを得なかったのだが、今度こそコン・ユは「こんなに小心で怖がりなトッケビ(鬼)でも大丈夫であれば、一緒にやりましょう」と答えたという。
その瞬間の心情を、キム・ウンスク作家は「とてもうれしかった」と感激をこめて振り返った。
それにしても、コン・ユはなぜオファーを断り続けたのか。
彼としても、キム・ウンスク作家のすごさをよく知っているので断るのは恐れ多いと思ったのだが、それでも彼には断らざるを得ない事情があった。
それは、ドラマの制作スタイルへの不安が強いからだ。




先に制作を完了して放送するという「事前制作」であれば、コン・ユもそこまで不安を抱えないのだが、韓国ドラマの通常のスタイルでは、撮影しながら放送するという「生放送」に近い状況に陥ってしまう。そのことをコン・ユは、体力的にも精神的にも恐れてしまうのだった。
そういう意味で彼は「長い時間をかけてじっくりと撮影する映画のほうが自分には合っている」と考えていたのである。
ただ、俳優はオファーがあってこそ自らの道を切り開いていける立場だ。しかも、キム・ウンスク作家が5年にわたって熱心に誘ってくれている。さすがに、コン・ユも断りきれなくなったというのが正直なところではないのか。
そんな風に始まったのが『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』であった。
キム・ウンスク作家は、すばらしい脚本を書くのだが、物語の後半になると勢いが落ちると批判されることもあった。
しかし、念願だったコン・ユの主演が実現できて、キム・ウンスク作家は最後の最後までエネルギーを保ち続けたまま『トッケビ』の執筆を終えた。




それにしても、コン・ユが出演を決めた際にキム・ウンスク作家に送った「こんなに小心で怖がりなトッケビ(鬼)でも大丈夫であれば、一緒にやりましょう」というメッセージは面白い。
実際に、『トッケビ』の中でコン・ユが演じているキム・シンは「小心で怖がりなトッケビ」そのものではないか。
確かに、キム・シンは900年以上も前の高麗時代に王に裏切られて胸に剣を刺された将軍だった。しかし、現代まで生き続けている彼は、同居する死神とは小さいことでいつもモメているし、胸の剣を抜いてくれるかもしれない高校生のウンタクに次々と攻め込まれてタジタジになってしまっている。
背負っている宿命は重いのだが、現代に生きる男にしては小心の部分が多いのだ。
その落差がまたキム・シンの人間的な魅力になっているのだが、コン・ユはそんなキム・シンを「ときに馬鹿がつくほどに真面目に、ときに見ている人がハラハラするほどに不器用に」演じている。
キム・シンという特異な存在を自然体で演じられるところがコン・ユの俳優としての魅力である。




彼は、天性の俳優というわけではない。むしろ、自分のすべてを注ぎ込んで少しずつ成長してきた俳優だ。
しかし、その成長の陰には数多くの苦悩があった。
端的に言えば、妥協することができれば、コン・ユは芸能界という浮き沈みの激しい世界で、もっと巧みに立ち回ることができたはずだ。
しかし、彼は自分を抑えて妥協してまで、この世界で小さな成功をおさめようとは思っていない。
それが、何事にも全力を尽くすコン・ユという俳優なのだ。
演技に対する心情はどこまでも純粋で真摯だ。多くの脚本家や監督からオファーを受けるのも、その姿勢が厚く信頼されているからだ。
そして、『トッケビ』でまたコン・ユは、希有な存在感を持った俳優であることをドラマを通して証明した。

構成=「韓流テスギ」編集部

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