主演映画の『王の男』(2005年公開)が記録的な大ヒットをしてイ・ジュンギの人気が絶頂のとき、ドラマの撮影で忙しいにもかかわらず、彼は1日に5カ所の映画館を回りながら舞台挨拶をこなした。
彼の素直さ
すでに公開して日も経ち、観る人はほとんど観たというのに、地方を往来しながら映画を広報したし、ファンとの一日デートにも喜んで参加した。
多くの俳優が映画の公開直前に、決められた大型映画館で2、3回の舞台挨拶をして済ませてしまうのと比べると、まるで違っていた。
イ・ジュンギのこのような姿勢からは、自分の作品についての強い愛情と責任感が感じられた。
また、その頃に、イ・ジュンギが「日本が好きだ」と発言したのは、彼の素直さによるものだ。未だに韓国では日本のことを好意的に言うのは難しく、ましてやスターがそのようなことを話したら、とかく問題になる。そんな雰囲気の中でイ・ジュンギが日本びいきの発言をしたので誤解を生んだのだが、彼について少しでも知っている人なら、その発言が単純に日本が好きだという意味ではないことがわかっている。なぜなら、イ・ジュンギの映画デビュー作は韓国映画『王の男』ではなく、2004年の日本映画『ホテルビーナス』だからである。
まだ無名だった頃、オーディションにいつも落ちていたイ・ジュンギが、偶然に彼のプロフィールを見た日本の監督に抜擢されて『ホテルビーナス』に出演した。この映画は韓国でも公開されたが、イ・ジュンギ自身はほとんど注目されなかった。それでも、イ・ジュンギにとって『ホテルビーナス』は、俳優になろうという一念で故郷を出て苦労を重ねた彼が、やっと夢をかなえた作品なのである。
実際、イ・ジュンギは『ホテルビーナス』について、「撮影はきつかったのですが、ただカメラの前に立てることだけでも嬉しかったですね」と語っていた。
当然ながら、チャンスを得た日本という国に特別な感慨を持っても不思議ではないだろう。
(次回に続く)
文=朴敏祐(パク・ミヌ)+「韓流テスギ」編集部