『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』は、本国の韓国はもちろんのこと、配信を通して世界中でファンを増やしている。今まで韓国ドラマになじみがなかった人たちも評価するほど、まさに普遍的なドラマなのだ。
三兄弟がとてもいい
韓国で権威がある百想芸術大賞で、2019年のテレビ部門で作品賞を受けたのが『マイ・ディア・ミスター』である。それによって、このドラマの優れた作品性が証明されたといえる。
どんなドラマなのだろうか。
イ・ソンギュンが演じるパク・ドンフンは、大手建築会社の構造エンジニアの部長だ。しかし、左遷させられた社内で鬱屈していた。そんな彼に賄賂の現金が送り付けられてくる。そこから、ドンフンは社内抗争に巻き込まれてしまう。
そんな会社で派遣社員をしているのが、IUが演じるジアンだ。彼女は父が残した借金を抱えてどん底の生活をしていた。
お金がほしかったこともあり、ジアンは社長派の要請によって、反社長派と見られたドンフンの携帯電話の盗聴を始めた。
結果的に、ジアンはドンフンの私生活のすべてを知るようになる。それによって、ジアンは冴えない中年男と思っていたドンフンの人間性を詳しく知るようになり、それによって思いがけない感情が徐々に芽生えてくるのだが……。
以上が序盤の『マイ・ディア・ミスター』のストーリーなのだが、ドンフンの会社の場面は物語の半分であり、残り半分は彼の兄弟たちの話になっている。
ドンフンの兄のサンフン(パク・ホサン)は、事業に失敗してばかりだった。そして、弟のギフン(ソン・セビョク)は、映画監督として成功できなかった。結局、サンフンとギフンは掃除の会社を始め、苦労しながら共同で歩んでいく。
この三兄弟は仲が良くて、連日のように飲み歩いている。その中で、ドンフンの家族愛や地元への愛着が描かれていく。このあたりの場面がほのぼのしていて、見ていると三兄弟に情が沸いて応援したくなる。
このように、『マイ・ディア・ミスター』というのは不思議なドラマだ。ドンフンが勤める会社の社内抗争では緊張感が続く場面の連続だが、ドンフンが家路につくと、とたんにドラマがヒューマンタッチになって心が温かくなる。
まさに、『マイ・ディア・ミスター』は「スリル」と「ほのぼの」が同居した多様性ドラマの傑作なのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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