『華政』で描かれた貞明公主の物語「第4回」

激怒した仁穆王后

西宮に幽閉されて過酷な生活を強いられていた仁穆王后と貞明公主。2人にとって、綾陽君はまさに救世主だった。
しかも、仁穆王后と貞明公主は光海君に強い恨みを持っており、いわば、復讐する機会を作ったのが綾陽君であった。
それなのに、綾陽君が使者を西宮に送ると、仁穆王后は喜ぶどころか、あからさまに不平を言った。
「この10年間、誰も見舞いに来なかった。そなたたちはどんな立場で、こんな夜中に突然やってきたのか」
そう言って怒りをあらわにした仁穆王后。綾陽君は彼女と貞明公主を王宮に迎えようとしたのだが、仁穆王后はきっぱりと拒否した。
その激怒ぶりを知った綾陽君は、自ら西宮に出向いた。彼はひれ伏して仁穆王后と貞明公主が現れるのを待った。




西宮の中庭にひれ伏していた綾陽君。彼は、クーデターの成功に感極まり、思わず涙を流した。すると、彼に従っていた者たちも、つられて号泣し始めた。
そんな中で、ついに仁穆王后が現れた。
彼女は、男たちに優しく声をかけた。
「泣くのをやめなさい。めでたいことをしたのに、なぜ泣く必要があるのか」
すでに仁穆王后の怒りは解けていた。彼女は今まで無視され続けたことに腹を立てたのだが、それは一瞬のことで、クーデターの成功をことのほか喜んだ。
「まさか、こんな日がくるとは、夢にも思わなかった」
仁穆王后はそう言って綾陽君をねぎらったが、その気持ちは貞明公主も同じだった。
彼女は、ずっと絶望の中にいた。弟の永昌大君を殺され、自分も王女から庶民に降格となり、母と一緒に監禁されていた。
どんなに光海君が憎かったことか。
それが、今ようやく復讐を果たせる機会が訪れたのだ。これほど晴れやかな日が他にあろうか。
(第5回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

『華政』で描かれた貞明公主の物語「第1回」

『華政』で描かれた貞明公主の物語「第2回」

『華政』で描かれた貞明公主の物語「第5回」




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