意表をつく形で始まるが、その「意表」に深い意味が隠されていることが次々に明らかになっていく……そんな興味深い展開を持った映画が『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』である。キム・ナムギルとチョン・ウヒの主演。数々の美しい映像が、温かさと癒しを大いに感じさせてくれる。
どんなストーリー?
保険調査員のガンス(キム・ナムギル)は、最愛の妻を亡くしたことで、途方に暮れていた。
そんなとき、会社の上司から命令を受けた彼は、調査のために事故で意識不明となってしまった視覚障害者の女性ミソ(チョン・ウヒ)の病室を訪れる。
ガンスが病室の中を見回していると、そんな自分を見つめる1人の女性の存在に気づく。本人によれば、意識不明の状態でベッドに寝ているはずのミソだという。
突然のことに驚いて病室を出て行くガンス。その後も、病院で彼女の姿を目撃するが、その姿は他の人には見えていなかった。そのため、ミソにはガンス以外に頼れる人はいなかったのだ。
ミソのことが唯一見えるガンス。信じられないことなのだが、やがてそれを受け入れたガンスは、ミソの事故について調査を進めていく。すると、そこにはとても悲しい出来事があった……。
『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』で注目したいのが、キム・ナムギルとチョン・ウヒの息が合った演技だ。
特に、2人が作中で次々に変化していく表情には、何か引き込まれるような感覚があり、とても印象深いものだった。
キム・ナムギルは、驚いたときや怒ったときなど多彩な表情を巧みに演じ分けていた。一方のチョン・ウヒは、悲しく辛い出来事を秘めながらも明るく振る舞っていた。その姿が印象的だった。
ストーリーにも大いに注目したい。様々な伏線があって、それが糸のようにつながって物語を豊穣の世界に導いていた。
やはり、韓国映画には情感が不可欠だ。「人と人の交わりがいかに情緒にあふれたものであるか」を『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』は美しい映像で存分に見せてくれた。
2020年に日本で公開された映画『82年生まれ、キム・ジヨン』!