まれにみる存在感
英祖はこう考えた。
「いまの思悼世子であれば、朝鮮王朝の王位を受け継がせるわけにはいかない」
そう考えれば考えるほど、英祖は思悼世子の息子であった正祖(チョンジョ)に特別に注目した。
幼いながらも考えがしっかりしており、学問にも励んでいた。
そこで英祖は、「思悼世子を飛び越えて孫に自分の王位を継がせたい」と考えたに違いない。
それを窺わせる英祖の言葉が「朝鮮王朝実録」に何度か載っている。結局、英祖はやむを得ず思悼世子を米びつに閉じ込めてしまった。
その思悼世子が餓死してしまった後、英祖は息子を心から哀悼している。
彼は偏屈な性格ではあったが、ただ感情のおもむくままに思悼世子を米びつに閉じ込めたわけではない。英祖なりに、朝鮮王朝の行く末を心から案じて、やむを得ない行動に出たのである。
こうした大事件で歴史に名を残した英祖。今までに名優と呼ばれるベテラン俳優が演じることが多かったが、『ヘチ』ではチョン・イルが若き日の英祖を颯爽と演じた。
その姿は、今までに英祖を演じた俳優の中で最も輝いていた、と言っても過言ではない。兵役から復帰して最初に『ヘチ』で英祖に扮したチョン・イルは、優れた演技でまれにみる存在感を示していた。
構成=「テスギ」編集部
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