多くの尊敬を集めた金万徳
金万徳はこの現状を打開するために、全財産を投げ打ち本土に出向くと、大量の食糧を仕入れ、島民に無償で配り始めた。金万徳の自己犠牲によって、済州島は最大の危機を乗り越えることができた。
彼女の行ないはすぐに22代王・正祖(チョンジョ)の耳に届いた。正祖は彼女の望むことをなんでも叶えるように伝令を走らせた。
しかし、金万徳は「当然のことをしただけです」と、その申し出を断った。
王命に背くわけにはいかず困り果てた伝令。その姿を不憫に思った金万徳は、「都を見学し、金剛山(クムガンサン)に登ってみたい」と答えた。
当時、済州島の女性は都に行ってはならない掟があった。しかし、正祖は金万徳の申し出を快く受け入れた。こうして彼女は女性の身でありながら、悠々と都や金剛山を観光し、故郷に帰っていった。
金万徳はその後も済州島で尊敬を集めて幸せに暮らしたという。済州島にはいまもなお「犬のように儲け、万徳のように使う」ということわざが残されている。