会席の場では年長者が箸をつけるまで年下は食べない。もし年長者が食事の前に説教のひとつでもするようなことがあれば、年下の者は黙ってそれを聞き、説教が終わって年長者が箸をつけてはじめてそれに続くことになる。そうした例をはじめとして、ドラマでよく見る食生活について説明しよう。
わざと少し残す
韓国には「膳の脚が折れるほど料理を準備する」ということわざがあるが、これは韓国人が客を非常に大事にするという「もてなしの心」を示したものである。
今でもこの習慣は残っており、韓国人が自宅に客を招待するときは、ことわざの通りの料理でもてなす。仮に客の器が空いた状態で食事を終えた場合、それは「料理が充分でなかった」ことを意味し、非礼をはたらいたことになってしまう。
したがって、もてなす側は空いている器を見ると、おかずであれご飯であれスープであれ、すかさずまたおかわりさせてしまう。
韓国の家に食事に招待されてお腹いっぱいになったら、その合図として「腹八分目」ならぬ「皿八分目」を心掛け器に料理を少し残すと良いだろう。
いくら口で「もうお腹いっぱいです」と告げても器が空になっていたら、きっとおかわりさせられるに違いない。
日本人なら誰でも、茶碗を置いたまま食事をすることは「犬や猫の食事のようで行儀が悪い」ことだと知っているはずだ。しかし韓国では逆に茶碗を持って食事をすると行儀が悪いと見なされる。これは、朝鮮王朝時代の上流階級が茶碗を置いたまま食事をした習慣が残っているためである。
当時は、茶碗を持って食事をする者というのは、お膳などを買う金のない貧しい人々だと見なされていた。
なお、日本同様に韓国でも箸を使う食文化があるが、日本と違うのはスプーンを多用することである。
食器を持たない習慣がある韓国では、汁物を飲むときにスプーンがないと飲みづらい。同時に、ご飯もスプーンで食べてしまう傾向がある。これはビビンバに代表される「混ぜる文化」のためであろう。
韓国ではご飯を汁物に混ぜて食べる、いわゆる「ねこまんま」をする人が結構いるのだが、その際いちいちご飯を箸で汁物に入れ、それをスプーン食べるという具合に使い分けていると面倒くさい。そこでスプーンひとつでご飯も汁物も済ませてしまうのである。この場合、箸は料理を食べるためだけに使われる。
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