縁があってこその登場
もう1人、イ・ヨンとホン・ラオンの2人に重要な人物がからんでいた。『雲が描いた月明かり』ではアン・ネサンが演じた丁若鏞(チョン・ヤギョン)だ。
彼はドラマの中で、ホン・ラオンの恩人という設定だった。それだけではなく、イ・ヨンが悩み苦しむときに適切な助言を与える師匠のような役割でもあった。
この丁若鏞は、歴史上でもイ・ヨン(孝明世子)に関係していた。それは、孝明世子の最期の日々のときだ。
史実では、孝明世子が病に倒れたのは1830年の閏4月22日だった。
急に喀血して具合が悪くなった。5月4日になると、さらに病状が悪化した。
5月5日に呼ばれたのが丁若鏞だった。
彼は著名な思想家で名著がとても多かったが、漢方薬についても博学だった。
孝明世子を診察した丁若鏞は、すでに孝明世子の寿命が尽きていることを悟った。
すでに、手の施しようがなかったのだ。
そして、丁若鏞に見守られるような形で、孝明世子は5月6日に亡くなった。
最期の日々に丁若鏞が孝明世子のそばにいたという史実は意味深い。『雲が描いた月明かり』に丁若鏞が登場するのも、それだけの縁があったからなのだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)