自分が見た映画とドラマの中でベスト1を挙げるなら、映画は『ニュー・シネマ・パラダイス』、ドラマは『冬のソナタ』と決まっている。不動の1位なのだ。映画のほうは順位に変化はないのだが、ドラマのほうは変更があるかもしれない。『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』を見たからだ。
社内抗争が描かれる
どんなに映画やドラマを見続けていても、生き方に深く影響する作品はそう滅多にあるものではない。人生の一時を楽しませてくれたら、それで一応は終わりだ。
しかし、『マイ・ディア・ミスター』の場合は、見終わった後も余韻がずっと残り続けて胸が熱くなる。それほど感銘を受けたドラマだった。
主役はイ・ソンギュンとIU。この2人が親子ほど年が離れた男女としてドラマを彩っている。
イ・ソンギュンが演じるのは、構造エンジニアのパク・ドンフンだ。真面目な性格だが、悩みが多く常に沈んでいる。
そんな彼が勤める企業の派遣社員になったのが、IUが演じるイ・ジアンだ。彼女は不幸な境遇に置かれたままで、借金も背負っている。それゆえにお金で社内工作を請け負うようになり、ドンフンの携帯電話を盗聴する。
それを通してジアンは、ドンフンの私生活を詳しく知るようになり、やがて彼への共感を抱く……。
まずはイ・ソンギュンとIUの演技がすばらしい。そのことを強調したい。
さらに見ていて感心したのは、描かれているエピソードの多彩さだ。その場面は主に2つに分けられる。
1つはドンフンが関係している社内抗争だ。
社長派と反社長派が激しく対立し、その中でドンフンとジアンが巻き込まれていく。非常にスリリングな展開の連続だ。
もう1つはドンフンの家族愛と地元愛。
ドンフンは三兄弟の二番目で、長男と三男ととても仲が良くていつも一緒に飲み歩いている。
そんな彼らが行く地元の酒場が、うらやましいほど盛り上がっている。酒好きな人なら、誰もがあの酒場で飲みたいと思うことだろう。
こうして『マイ・ディア・ミスター』は社内抗争とドンフンの私生活が縦横に絡み合い、最高の物語に仕上がっている。
1つだけエピソードを加えたい。
ドンフンの兄は清掃業を行なっているが、ビルのオーナーから理不尽な仕打ちを受ける。その末に土下座せざるを得なくなり、愛する母親にその屈辱を見られてしまう。それを知ったドンフンが、ビルのオーナーに仕返しをする場面が痛快だ。しかも大いに泣ける。
こういうエピソードが『マイ・ディア・ミスター』には次から次へと出てきて、見ている人を最良のドラマの世界にいざなってくれる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
マイ・ディア・ミスター感服特集「第1回/いかにも韓国らしい作品」