朝鮮王朝オバケ悪女1「貞純王后」

やりたい放題の貞純王后

貞純王后が再び表舞台に出てきたのは正祖が危篤になったときだった。
1800年6月、貞純王后は正祖の側近を叱りつけた。
「私が直接薬をさしあげるから皆の者たちは下がっていなさい」
王族最長老の女性にこう言われてしまっては、重臣たちも引き下がるしかない。
結局、病床の正祖のそばにいたのは貞純王后だけだった。
重臣たちが部屋の外で待機していると、突然、貞純王后が慟哭(どうこく)する声が聞こえた。あわてて重臣たちが駆けつけると、正祖は息絶えていた。つまり、正祖を看取ったのは貞純王后1人だった。
ここから、貞純王后が正祖を毒殺した、という風評が立つようになった。実際、正祖が亡くなって一番利益を受けたのが貞純王后だった。
王位は正祖の息子の純祖(スンジョ)が継いだ。しかし、まだ10歳だったので、貞純王后が摂政となった。それから彼女は何をしたか。




政敵にカトリック教徒が多いという理由で、信者の大虐殺を行なった。さらに、正祖が進めていた改革をことごとくつぶし、彼が登用していた高官たちを罷免した。
その上で、貞純王后は自分の側近で政権中枢を牛耳った。「巨悪」という意味で、彼女ほどの悪女は朝鮮王朝には他にいなかった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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