青嶋昌子の韓国映画三昧3『八月のクリスマス』

この作品を抜きにして韓国の恋愛映画を語ることはできないかもしれない。韓国でも日本でも、美しくはかない愛の一幕を描いた名編として、恋愛映画のベストに挙げるファンも多い。

ⒸUNO FILMS



大切にしまっておきたい珠玉の名作

不治の病に冒されながら、健康な人と同じように日常生活を送るジョンウォンと、彼が営む写真館に客としてやってくるタリム。店主と客というありふれた関係から、お互いが淡い思いを抱き、それを大切に育む過程が、とても淡々とつづられていく。
若さあふれるタリムの姿は、死を目前にしたジョンウォンにはまぶしすぎる。無邪気なタリムにはどこか卓越したようなジョンウォンの佇まいが、なんとなく気になって仕方がない。
ジョンウォンを演じたハン・ソッキュは声優で芸能界にデビューしたあと、ドラマ、映画と、階段を一段ずつ上るように俳優としてのキャリアを積んでいった。そして、「八月のクリスマス」に出演当時は、韓国映画界の若手トップとして、彼の出る映画は必ずヒットするといわれた。この作品ではエンディングのテーマソングも担当、声優時代に培った自慢の美声で観客を酔わせた。
清純なイメージで日本にも多くのファンを持つシム・ウナは、この作品の演技で数々の映画賞を総なめにしている。タリムが彼女でなかったら、「もしかしたらこの作品自体が、これほどの評価を得られなかったかもしれない」とまで言われた。




自然で飾り気のない彼女の魅力は、同年の映画『美術館の隣の動物園』でも十二分に発揮され、演技派美人女優としての名声をほしいままにした。
◆見どころ
機械に弱くビデオの録画操作も一人でできない父親のため、マニュアルを作って残そうとするジョンウォン。うまくいかずに苛立つ彼の表情は、限られた時間のなかでやり残したことの多さを物語る。
◆キャスト
ジョンウォン(ハン・ソッキュ)
タリム(シム・ウナ)
1998年作品

文=青嶋昌子(あおしままさこ)

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