仁穆(インモク)王后は「光海君の首をはねろ」と言いましたが、仁祖(インジョ)としては、とうてい承諾できないことです。「いくら王宮から追放したとはいえ、先の王の首をはねてしまえば、非道な王と評されるおそれがある。歴史でどんな扱いを受けるかわからない」と彼は考えたのです。しかし、仁穆王后も絶対に譲りません。
江華島への流罪
仁祖と仁穆王后の間で押し問答が続きます。
仁穆王后の意見は強硬でしたが、仁祖も最後までそれに抵抗して、光海君の首をはねることはしませんでした。
2006年に韓国で放送された「王の女」は、光海君の後ろ楯になった金介屎(キム・ゲシ)を描いています。彼女は光海君の父親の宣祖の時代から、女官として有能に働きました。なによりも、人を動かす術が巧みだったと言われています。
彼女を主人公にした「王の女」の最終話には、仁穆王后が目の前で光海君を土下座させて数々の悪行を糾弾する場面があります。韓国ドラマには怒りを爆発させる人の話がよく出てきますが、このときの仁穆王后の怒りも凄まじく、見ていても背筋が寒くなるくらいです。実際、仁穆王后の怒りは半端ではなかったのでしょう。
それでも、仁祖は光海君の命を奪いませんでした。少なくとも、朝鮮王朝の王位にあった事実を重んじたのです。
光海君は、正室の柳(ユ)氏や息子夫婦と一緒に江華島(カンファド)に流されました。柳氏は、江華島に行く船の中で、夫である光海君に「一緒に身投げして心中しましょう」と言いましたが、光海君はそれを拒絶して生き抜く覚悟を決めました。
江華島では、息子夫婦が逃亡をはかって失敗し、結果的に絶命します。それを悲観した柳氏は自ら命を絶ちます。それでも光海君は生き続け、最後には江華島から済州島(チェジュド)に移されます。
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