1万数千年前、済州島(チェジュド)は朝鮮半島とつながっていた。つまり、当時の済州島は陸地の最南端に当たっていたわけだ。そこに漢拏山(ハルラサン)がそびえている。北の方角から見れば、標高1950メートルの火山は目立って仕方がなかった。ゆえに、暖かい場所を求めて南下する人には大きな目印となる。
岩と紅葉の組み合わせ
現在の朝鮮半島に住む人々の原型は、東北アジアに広く分布していたモンゴロイド系の人々である。後にツングースと呼ばれた狩猟民族と考えればいい。その種族は氷河期に暖かい土地を求めてひたすら南下した。
「遠いところに高い山がある。あそこまで行こう」
当時は済州島も朝鮮半島と陸続きだから、漢拏山の麓まで辿り着くことも可能だった。そうやって多くのモンゴロイド系種族が最南端で定住するようになった。
ところが、氷河期が終わって水位が上がり、済州島は離島として孤立した。もはや他の種族が漢拏山まで南下することができなくなった。こうして先に最南端に達した人たちが済州島の先住民となったのである。
そして、1万数千年後の現在に至っている。
陸続きの状態から南海の孤島になった済州島。1万数千年も経てば、済州島の風土は陸地とはかなり違う。
たとえば紅葉。
韓国で一番暖かい済州島では、韓国北部のように寒暖差が激しい地域に比べると、島全体でも紅葉が顕著に見られる地域は少ない。
それでも、韓国最高峰の漢拏山があるだけに、標高が高い場所では相応の紅葉が見られる。特に、火山島として岩肌が多い済州島では、岩と紅葉の組み合わせが美しさを際立たせている。
文=康 熙奉(カン ヒボン)