キム・ナムギルの俳優魂が『殺人者の記憶法』でどう変わるか

俳優が裏表をさらけだす意味

初出の場面から、キム・ナムギルの淡々とした演技が続く。ミン・テジュは警察官であり、常に冷静さを保っている。
しかし、観客は「テジュの本当の姿は?」と警戒心をつのらせていく。つまり、ミン・テジュが冷静であればあるほど、観客は裏を読もうとするのだ。その結果、次第にキム・ナムギルの抑えた演技に不気味さが漂っていくのである。
韓国の俳優の中でも屈指の演技派と評されるソル・ギョング。そんな彼の激情型の演技を受ける形で、キム・ナムギルの感情を押し殺した演技が続いていく。
見応えがたっぷりだ。2人の俳優の個性の違いが際立っていた。
その中でキム・ナムギルはシナリオに書かれた虚構の人物像をあますことなく演じ続けていた。
プロの俳優は、自分のイメージを守るためでなく、自分の裏表をさらけだすために演技をする。だからこそ、観客には架空の人物が実在のようにも感じられるのだ。




俳優が人間の本質にもっとも迫れるのは、虚像をかぎりなく実像に近づけた瞬間かもしれない。
キム・ナムギルにとって『殺人者の記憶法』は、俳優魂に火をつけた作品になった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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