「まどろみ」から目覚める
彼は本来、芸術家だった。「表現」という、人間にとって崇高で、他人に最も影響を与えられる手段をからだ全身で行なってきたのだ。
その成果は、隣国の分別ある人たちに、出会った感激と生きる悦びを、豊穣な実りのようにもたらしてきた。それを芸術と言わずして、一体何を芸術と言えばいいのか。
わかる人はわかる。わからない人はわからない。
けれど、わからない人もいつかわかるときがくるかもしれない。そう思わせる神秘的な磁力がペ・ヨンジュンにはあった。
しかし、今のペ・ヨンジュンは俳優でもなければ芸術家でもない。経営者と呼んだほうがふさわしいだろう。
芸能界における株主所得番付でも上位に名前がよく出る。それほどの立場になった今、ペ・ヨンジュンがあえて、心身が極限まで消耗する過酷な撮影現場に戻っていけるだろうか。
確かに、春の日にまどろむと気持ちがいい。ペ・ヨンジュンの俳優魂もその「まどろみ」の中にいるのかもしれない。
それでも、日本にはペ・ヨンジュンの新作を待ち続けているファンがまだ大勢いる。その人たちの声を代弁する形で最後に一言付け加えたい。
「眠りから俳優魂を目覚めさせて、新しい物語につなげてほしい」
ペ・ヨンジュンの代わりができる経営者は数多くいるだろうが、ペ・ヨンジュンの代わりができる俳優は1人もいない。