初めてソ・ジソブを強烈に意識したのは、『バリでの出来事』のときだった。哀しみの表情の中に、何かをジッと耐えている人間の強さのようなものがうかがえて、その奥行きの深い人間性に引きつけられた。
彼が見せる「ありのまま」
記者会見のときによく行なわれるフォトセッションでも、ソ・ジソブはほとんど笑わない。どのスターもかならず満面の笑みを浮かべるのに、ソ・ジソブはそうしない。どこか遠くを見るような澄んだ瞳のままだ。
「人は誰だって、自分の中にある明るい面を出そうとするのに、なぜかソ・ジソブはそうしない。それが不思議だ」
そう思っていた。実際、多くのフォトセッションでもソ・ジソブはカメラマンの列をながめていることが多い。それが彼の「ありのまま」なのだ。
ソ・ジソブは変わらない。たとえ、どんなに周囲が変わったとしても……。
ソ・ジソブの人気を決定づけたのは、『バリでの出来事』と『ごめん、愛してる』であった。
ともに、2004年に制作されている。
それ以後の5年間、ソ・ジソブの俳優人生は平坦ではなかった。
2005年には兵役義務を果たすために、2年間の空白を余儀なくされた。軍隊で服務したわけではなく、代替要員として役所に勤務したのだが、演じたくても演じられないもどかしさは、いかばかりだっただろうか。
復帰したあと、大作ドラマの『カインとアベル』の主演が決まった。しかし、制作は大幅に遅れ、ストーリーも大きく変わってしまった。
かなり困惑しただろうが、それでもソ・ジソブは、「出演する」という約束をきちんと守った。
その間には、カン・ジファンと一緒に『映画は映画だ』に主演し、大ヒットも記録している。
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