顕徳王后の呪い
世祖の落胆は甚(はなは)だしかった。
その直後から、宮中では噂話が絶えなくなった。
「殿下は呪われている。世子様を亡くされたのも呪いのせいだ」
決して根拠がない話ではなかった。世祖は顔の皮膚病に悩んでいたが、それができ始めたのは、夢の中で顕徳王后から顔に唾を吐かれた直後だった。そして、今度は最愛の息子までも……。
世祖は気味が悪くなって、顕徳王后の墓をつぶしてしまおうと考えた。
ところが、そこでも奇妙なことが起こった。職人が墓を掘り起こして遺体をおさめた棺を運び出そうとすると、それがビクとも動かなかったというのだ。これには、職人たちも腰を抜かした。結局、丁重な祭祀を行なって墓を清めたことで、ようやく棺を運ぶことができた。
その棺を職人たちが見知らぬ場所に放置したというから、ひどい話である。心ある人たちによって埋葬されたのがせめてもの救いだ。
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